民対活動記録

京都市営修学院保育所が平成30年度に民間移管することに対しての、保護者たちの活動記録です。

7/12 民間移管についての勉強会

7/12に修学院保育所で開催した、京都大学の大倉得史先生による、勉強会の報告です。
 
特に、エピソード研修のKちゃんの事例と、移管後転園したAくんの事例は、移管についての問題意識があらたになるエピソードでしたので、ぜひご一読ください。
 
 
「市営保育所の民間移管とは何か?」
2017年7月12日 水曜日 @修学院保育所ホール 
講師・京都大学人間・環境学研究科 大倉得史先生
 
 
<自治体はなぜ民間移管したいのか>
地方自治体にとって、保育は民間法人のほうが補助金が出るので、コストカットのために移管したい。(もともと自治体には保育実施義務があるが、年々規制緩和されている)
・国も自治体も、待機児童問題を解決するために認定こども園をつくり受け皿を増やしたい。
 
<民間移管の問題>
・税制面での優遇がない企業が参入すると、人件費を抑えようとする。アルバイトや派遣の依存で保育水準が著しく低下する。
・一部の地方自治体は保育の質を下げても箱モノを増やし、見た目だけ早く待機児童をゼロにしたい
・やがて公営民間全ての保育士が競争原理に巻き込まれ、他の施設との差別化、厳しい人件費カットを迫られていく
京都市の公営保育所率はすでに全体の約7%(政令指定都市ワースト)
 
<心を育てる保育とは>
京都市保育所は「主体としての心をつくる」保育を行なっている。
 ・「私は私」(自信と自己肯定感)という気持ちと、
 ・「私は私たち」(他者に対する信頼、安心)
という、やじろべえのように揺れながら成長するこどもの心に、寄り添う保育を行なっている。
このやじろべえは、左右どちらに傾いても幸せになれない。
・「私は私」に傾くと、周囲から孤立してしまう。
・「私は私たち」に傾くと、周りの顔色を伺い、自分の思いを我慢するようになる。
主体性をもち、バランスよく両面の心をしっかり備えつつ、自分なりの折り合いをつけていけるように「心の基盤」を作ることが何よりも大切。
 
<心が育たない保育とは>
・一方的に要求する「させる保育」(従順な子は育つかもしれないが・・)
・褒めて頑張らせる保育
・心より先に行動や能力を教育する
今の日本の保育教育業界は、早くにどのような教育をするのがよいかなど、能力を伸ばすことに傾倒している。(英語の早期教育など)
主体になりきれない子どもたちが増加しているのは、陰湿ないじめ、ニート、社会に出る自身を失う、友達と関わらないなどの問題は、「私は私・私は私たち」のこころが育まれていないことが、顕在化しているのではないか?
 
京都市保育所の保育水準は高い>
保育者がこどもの対人行動に対して、感受性豊かに、肯定的に応答する。
こどもや保護者の体験世界を共に生き、深い心の交流をしていく保育。
このような保育者のもとで過ごす子どもたちは心から「大切にされている」と思うことができ、周りの人も大切にしたいと思えるようになる。
京都市保育所は、見失われかけている「心を育てる保育」をはっきり目標に打ち出し、自覚的に実践しているため、保育水準は高い。
 
○エピソード研修より
「あ~おべんとう おいしかった!」
 
3歳児の女の子、Kちゃんは母子家庭で、お母さんはいつも忙しい。
こんど「おべんとうの日」があることもお母さんは気づいていないようなので、担任の先生に「おべんとうのことを伝えてほしい」と助けを求める。
先生は余裕のないお母さんの気持ちを重んじつつ丁寧に行事の存在を伝え、おべんとうの日は叶い、Kちゃんは大喜びで、先生も共に喜ぶ。お迎えにきたお母さんには、Kちゃんがどれだけ喜んでいたかを具体的につたえ、お母さんもほほえんだ。
 
①子どもの気持ちを受け止める養護的な働き
不安定で人の気を引こうとする行動に対し、「先生はKちゃんが大好きやで」とこたえた。
「母が怒るのでは」という不安を「大丈夫だよ」というほほえみでささえた。
お弁当を作ってくれたうれしさを爆発させて抱きついてくるのをうけとめ、一緒によろこんだ。
→擁護的働きの豊かさが子どもの心を育てるという実例となった。
 
②保護者への配慮
保護者に「アドバイス」をするのではなく、保護者の事情によりそって声をかける。
忙しい親にたいして、非難するトーンではなく話をする。
 
③保育者の願いを返す教育的働き
もっとこうなったら良くなる、という願いをもって相手にはたらきかける。
「幼稚園とちがい、保育園には教育はない」というのは誤りでああり、教育的な働きは必要である。
 
養護と教育は一体である必要である。養護的、教育的働きを織り交ぜ、懐の深い、真の通った対応をする。
この保育士は中堅で、育児の経験があった。
公営の保育士は子育て経験があることが多いが、民間園にくらべて産休や育休がとりやすい体制があるため、復帰しやすく、育児は人間的成長と保育士としての厚みを支える。
公営保育所はベテランの人材が充実する仕組みになっているため、保育水準を保つことができる。
 
 
 
<これまでの民営化での問題>
○Aくんの事例より
 
Aくんは、兄が重度のアレルギーで受け入れ困難と言われ、京都市保育所へ入所する。
母は多忙で、朝食を作る余裕もなかった。
市営の担任が、「連携をとって一緒に頑張りましょう」と時短レシピ提案などの手紙を出す。
お母さん、なんとかがんばろうと思えた。
 
しかし、民間移管のため「K園」の保育が始まる。
K園の方針には、市営のような自由な遊びの時間が全くなく、音楽、お絵かき、リトミックなどの「カリキュラム」で子どもを縛り付ける。
朝送りに行くと、コップ・タオル・お箸などの準備作業も多い。
保育士は自分でできない子どもには「○○くん、どうするんだっけ」とぞんざいな声かけをする。活発な(大人の思い通りにならない)子どもへは、冷たい態度をとる。
 
Aくん、通園をしぶり出す。
市営の先生がいなくなってさらに、保育園に行きたがらなくなる。
「お母さん、なんでもっと早く迎えに来ないの?」と怒る。
帰宅後もぐったりして食欲もない。
「なんでお母さんはぼくのいってることわかってくれないの?」と怒る。
やがてAくん、怖い絵を描くようになる。
 
お母さんは担任宛に、「こどもが園に行くのを嫌がりこまっています、一度先生とお話ししたい」とノートに書く。
担任から返事「Aくんに色々聞いてみたら『暑いから行きたくない』でした。Aくんが『イヤ』といったら『どうして欲しい?』と言ってみてください」(話したいと言うことへの対応がない)
その後、担任はまったく連絡帳を書かなくなる。
保育士の無駄話も多く、市営の保育士とのレベルの差も感じる。
 
子どもはひどい様子で、保育士と話し合いにならない。
お母さんは、幼稚園の転園を決意する。土曜保育なし、毎日弁当作り。
しかし、転園した初日から、Aくんには明らかな変化がある。
自分から園に行くといい、迎えにいっても「今これしてるから」と帰りたがらない。
癇癪も減る、怒っている理由もわかるようになる。
Aくんの描く絵は、もとの、豊かな表現の絵に戻る。
 
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<このような民間園に注意>
問題点① 心を育てない保育
市営の保育は、十分な自由遊びが可能で、独創性や個性にとって、最も大切な時間を過ごすことができる。子ども同士や保育士との「心の交流」も、この時間にもっとも生じやすい。しかし、市営の保育とは、対照的な民間園がある。
心ではなく「能力」を高めようとする保育を行うが、能力育成型の取り組みは保護者へのアピールになるため、熱心に行う園も多くある
 
問題点② おとなの支持的な言葉掛けが多い
保育の一番の基本は「子どもの気持ちを感じ取ること」だが、子どもたちに号令をかける、集団を動かす保育を行う。「先生は自分のことをわかってくれる」という信頼関係が生まれない。
 
問題点③ 保護者とのコミュニケーション不足、または配慮不足
市営の保育士は、子どもの様子をを丁寧に保護者に伝える。すでに移管した園では「移管後は、保育士に話しかけられることが減った」と感じる保護者が多数いる。移管後は、人手の少なさもあるようだが、担任と会う機会がなかったり、忙しくて話せないムードがある。
また、若い保育士ばかりで、子育てのことを相談しても、親の気持ちがわかってもらえるかという疑念が強くなる
 
問題点④ (生活発表会や運動会が)見せるための行事になっている
 
 
京都市の問題点について>
①最低点について
選定部会を経て、合格最低点は7割となったが、上記のAくんの事例で紹介したK園は、かつて、7割得点で合格した法人だった。当時は「これ以下の点数で移管はしない」という最低点がなかったが、このK園ではAくんのような事例が多発しており、7割得点では問題が起こっていることを踏まえていない。しかし、京都市は7割で合格させた過去があるので、7割以上にあげるとK園の移管そのものを否定することになるから、足きり点をあげられないというのが実情。
 
②市の責任の所在があいまい
京都市が認可した保育園では、移管後心身に不調をきたし、転園を余儀なくされた子どもが出たが、それに対する保証や謝罪はない。2014年に上京区のせいしん幼児園で起こったプール事故の責任も、京都市にはないと言い切っている。
 
③配慮が必要なこどもにたいする保育の後退
配慮が必要なこどもの入所は、2016年度で民間が4.7%、市営18%。障がい児や配慮が必要な子どもへの保育に定評がある市営に「集中」している。
保育課も、「現状のように受け入れの割合が高くなれば、通常保育が成り立たなくなってくる状況であります」と明言しているが、民営化の方針は買えない。
障がい認定がつかないけれど通常の生活が厳しい子ども、手厚い配慮が必要な子どもが50パーセントを超えている市営保育所のクラスもある。これは、インクルージョン(障害の有無に関係ない)の動きに逆行している。公営保育所は厳しい状況の子のセーフティネットになっている現状があるので、なおさら、公営保育所は減らすべきではない。
 
先生のお話をお伺いしたあと、今後の民営化対策委員がどのように活動していけばよいか、様々な意見交換が行われました。
今年も非常に実り多い勉強会でした。大倉先生、ありがとうございました。